リューズを外したい…でもリューズは引っ張っても抜けない仕組みになっています…無理に引き抜けば壊れてしまいそうです。
リューズを外す機会は意外にもあります。時計の針が外れた等のちょっとしたメンテナンス、また時計の分解をする為には、必ずリューズを外す必要があります。
リューズを外すのは、時計をメンテナンスする為の第一歩といっても過言ではありません。
簡単そうで実は奥が深い、そんなリューズの外し方について解説していきたいと思います。
リューズが抜けないように止めている仕組みについて
リューズが抜けないようにロックしているのは、「オシドリ」と呼ばれる部品になります。
オシドリのツメが、リューズの巻き芯に引っ掛かるように止めている事で、抜けないようになっているのです。
オシドリのツメ先は小さく、少しでも浮かしてあげればロックしなくなります。浮かしている間に引き抜くと、リューズが外れるのです。
しかしオシドリの部品を写真で確認する限りは、小さくて繊細な部品そうですね。無理に引っ張れば折れてしまいそうです。
オシドリはムーブメントのどの位置に存在する
リューズを外すためには、まずはオシドリがどこにあるかを見つけなければなりません。
通常はリューズの近くに配置してありますので、リューズの差し込み口辺りから確認されてみて下さい。
リューズの巻き芯が、ムーブメントに刺さったような状態になっているはずです。巻き芯が差し込まれている延長線上にオシドリの部品の一部が見えています。
小さな部品だけに慣れない内は探すのが難しいかもしれません。私も時計の修理の勉強を始める前は、見つけきれずに苦労しました。
良く分かっていなかった当時は、リューズが差し込まれている近辺の全てのネジを緩めてみたりしていました。今思えば怖いです…
見つからないからと焦らず、まずは眺める位のリラックスした気持ちで探されてみては如何でしょうか。
リューズを外すには、まずは裏蓋を開ける
リューズを外す為には、裏蓋を開けなければなりません。まずは裏蓋の形状を確認されてみて下さい。大きくはこの2パターンです。
どちらのタイプかによって、裏蓋を開ける際に使う工具は変わってきます。
「はめ込み式タイプ」については「コジアケ」を使用します。裏蓋の一ヶ所に、少しだけコジアケの刃を差し込める隙間があります。
その隙間に押し込む事で、裏蓋が外れてくれます。隙間の確認がしづらい場合は、「キズミ(虫眼鏡のような工具)」を使うと分かりやすいです。
また裏蓋を付ける際には「裏蓋閉め器」があると良いです。裏蓋を取り付けるのに指先の力だけでは無理があります。
「スクリュータイプ」は「裏蓋オープナー」と「時計固定器」が必要です。時計固定器に時計をセットし、裏蓋のくぼみにオープナーの刃をフックさせ、反時計回りに回すと開ける事ができます。
どちらのタイプも、裏蓋に傷がつかないようにするためには、ある程度の慣れが必要です。裏蓋やケースに傷をつけてしまうと取り除く事はできないので、慎重に作業しましょう。
- はめ込み式タイプ:コジアケ、裏蓋閉め器、キズミ
- スクリュータイプ:裏蓋オープナー、時計固定器
リューズの外し方
裏蓋を外したら、ムーブメントがむき出しの状態になっているはずです。オシドリの位置が確認できたら、後はオシドリを緩めてリューズを引っ張れば外れてくれます。
リューズを止めているオシドリには、大きくは2つのタイプが存在します。
オシドリを緩めて外すのに変わりはありませんが、どちらも緩め方に少々コツがいります。その為、タイプ別に外し方を解説していくようにします。
後は滅多に見かける事はありませんが、オシドリで止めている仕組みではなく、巻き芯の棒が互いにカギ手のようになっていて、繋ぎあっているようなタイプのものも存在します。
ただ私自身も2~3回、しかもアンティーク時計で見かけた程度なので、参考までにご確認下さい。
ネジ止め式タイプ
ネジ止めタイプのオシドリは、ネジを緩める事でオシドリが浮いていき、リューズを引き抜く事ができます。ネジ止めタイプに必要な工具は「精密ドライバー」です。
前の章でオシドリの位置を探す、とご説明しましたがネジ止めタイプは、オシドリを止めているネジを探す事になります。
ムーブメントの「地板」や「輪列受」を止めているネジと比べると小さく、またリューズを差し込んである線上に配置されている事が多いので分かりやすいかもしれません。
外し方には注意点があります。ネジを緩め過ぎてしまうと、ネジがオシドリから外れてしまうのです。
外れてしまっては、いざオシドリを締めようとネジを回しても、オシドリのネジ穴から完全に外れてしまっている為、元には戻らなくなってしまいます。
オシドリのネジ穴に、ネジを再度ついた状態に戻す為には、ケースからムーブメントを外し、更に時計の針と文字盤を外しと、結構手間が掛かります。
完全に分解するのであれば、外れてしまってもさほど気にならないかもしれませんが、ちょっとした補修でそこまで分解するのは少々負担です。
その為、ネジを半回転程緩めては、リューズが抜けないかを確認する、くらい慎重に緩めた方が良いです。
- 精密ドライバー
プッシュ式タイプ
プッシュ式は、文字盤側からオシドリの部品を押さえつけている状態になっています。
反対側から押せば浮き上がるようになっておりますので、オシドリと一体になっている突起の金属をプッシュする事でリューズを外します。
必要な工具ですが、理想は時計修理用の「ピンセット」です。ただオシドリの金属部分をプッシュできればいいので、先の尖った金属であれば代用が効きます。
私自身はピンセットかバネ棒外しのどちらかを使っています。
プッシュ式の方が、ネジ止めタイプの様に神経質にはならなくて良いです。押す事で外れてくれます。しかし力加減には注意されて下さい。
あまりに力を入れすぎると、オシドリ自体やオシドリを押さえている部品が破損してしまう事もあります。
精密機械なのでそこまで強くは押さない…と感じるかもしれませんが、時計によってはオシドリが錆びて固着していたりする事もありえます。
押してみてカチカチの状態であれば無理に押さない方が良いです。
プッシュ式の方が外しやすいかもしれませんが、慎重に作業をした方が良い事に変わりがありません。押しすぎは要注意です。
- ピンセット、バネ棒外し(先の尖った工具でも可)
引き抜きタイプ(レア)
このタイプは滅多に見かけないタイプですので、参考までにご確認下さい。元々の仕組みがオシドリで止めているわけではありません。
リューズの巻き芯が手を繋ぎあるように、つかみ合っている状態になっています。リューズを外し方は、力強く引っ張って抜くのです。
引き抜くタイプは、見極めが重要になってきます。オシドリのネジ、もしくはプッシュする金属片がない事を確認しなければなりません。
その上で力を入れて引き抜くのです。かなり勇気がいります。万が一オシドリで止めていたら破損させてしまうからです。
私は過去2~3回しか見かけた事はありません。しかもアンティーク時計等の古い時計です。
このタイプは無理にリューズを抜かずに、時計店等で対応してもらう事をお勧めします。
リューズの取り付け方
外したリューズの取り付けは、元あった場所にリューズ差し込んであげると良いです。
ネジ止めタイプは、ネジを締めますと元の様に抜けなくなっています。もし奥まで入り込んでいかない場合、ネジを緩めて奥まで差し込んで下さい。
プッシュ式は差し込んでいくと「カチッ」と小さな音がして、ロックが掛かってくれます。もし入り込んでいかないようでしたら、オシドリを押した状態で差し込んでみて下さい。
どちらのタイプもリューズを取り付けたら、引っ張っても抜けない事の確認は行った方が良いです。取り付けたつもりでも、上手くロックされていない事はありえます。
また差し込む際に思ったように入り込んでいかない場合は、無理に押し込まないよう注意してください。
リューズの巻き芯は「キチ車」「ツヅミ車」の空洞部分を通っていきます。この2つの部品のどちらかがずれていた場合、リューズが入り込んでいきません。
そんな状態で力任せに押し込むと、リューズ操作関連の部品を壊してしまう可能性もあります。力を入れすぎず、丁寧に作業されてみて下さい。
リューズの外し方が分からないと感じた時
リューズを止めているタイプは2パターン程ですし、取り外しの工程が難しい訳でもありません。しかしムーブメントはやはり精密で繊細な機械になります。
ちょっとでも難しいかな?と感じたら無理をしない方が良いです。
上記でもお話しましたが、オシドリが固着している事もあります。錆びているかもしれません。
そんな状態で無理に外そうとすると、部品を壊してしまう可能性もでてくるのです。ネジ止めタイプですと、ネジを舐めてしまい外せなくなってしまう事も…
私自身経験したのは、やはり錆びたネジを無理に回そうとしてしまい、ネジ山を潰してしまった事でしょうか。後はネジを回しすぎて、ネジがオシドリから外れてしまった事は何度もあります。
慣れない内は、無理しない程度で慎重にリューズの取り外しを行った方が良いです。壊してしまっては元も子もないです。
まとめ
今回はリューズの外し方について解説しました。ネジを緩めるタイプなのかプッシュするタイプなのかで外し方が違いますが、どちらも難易度は高くはありませんでした。
リューズを外す事よりも、裏蓋を開ける方が難しいかもしれません。
リューズを外す為には、その時計に合う工具が必要になってきます。工具についておさらいしましょう。
まずは裏蓋を開ける工具です。裏蓋のタイプは2種類存在しました。裏蓋のタイプと、裏蓋を外す工具はこちらになります。
リューズを止めるタイプも2種類あります。リューズを止めているタイプと、リューズを外す為に必要な工具はこちらです。
各タイプにプラスして、「キズミ」があると作業がしやすいかもしれません。
リューズを外す際に一番気を付ける事は、力加減を間違えない事です。時計のムーブメントの部品は繊細なので、注意されてください。
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