時計修理 オーバーホール

アンティーク時計が動かない?ぶつけたりしていなければ考えられる原因はこの3点

久々にアンティーク時計を使用しようと動かしてみるも、竜頭を巻いても動き出さなかった…

アンティーク時計をお持ちでしたら、こんな経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

特に時計を強くぶつけたり、落としたりもしていないのに動かなくなってしまうと、「何故」と思ってしまうものです。普段気を使っていただけに余計がっかりしてしまいます。

ただ、時計にダメージを与えずに動かなくなったという事は、時計内部の部品類は破損していない可能性が高い、イコール復旧の可能性が高いと言い換える事もできます。

今回は、アンティーク時計が動かなくなってしまう原因や、アンティーク時計の不調になりやすい箇所について解説していきたいと思います。

特にアンティーク時計にダメージを与えていないのに動かなくなってしまう原因

特にアンティーク時計にダメージを与えていないのに、動かなくなってしまう原因はこの3点です。

  • 原因1:ムーブメントにチリ等の小さなゴミが蓄積し、動作を妨げている
  • 原因2:ムーブメントにさしてある油が乾いてしまった為、動作不良を起こした
  • 原因3:時計の寿命

「原因1」「原因2」に共通するものは、ズバリ「メンテナンス不足」です。アンティーク時計は年代を得ているだけに、どうしてもメンテナンス不足に陥りやすいのです。

アンティーク時計は手巻きや自動巻きといった機械式時計になります。機械式時計は繊細なので、小さなゴミであっても時計の内部に入ってしまえば思わぬ影響を与えたりします。

では早速それぞれ原因について解説していきます。

原因1:ムーブメントにチリ等の小さなゴミが蓄積し、動作を妨げている

時計の動作を司るのは、ムーブメントと呼ばれる機械になります。このムーブメントに「ちり」や「ほこり」等の小さなゴミが付着する事で動作不良を起こす事があります。

アンティーク時計は現代の時計程、密閉性がなく割と小さなゴミが侵入しやすいのです。具体的には竜頭回りから侵入する事になります。

因みにですがアンティーク時計でも年代が新しくなると、竜頭回りに防水用のパッキンがついている事もあります。しかしパッキン類はゴム製です。劣化すると硬化してしまい本来の役目をはたさなくなってしまいます。

小さなゴミが原因で動作不良を起こしている場合は、オーバーホールで復活します。無理に動かせば、時計の部品に負担が掛かってしまうので動かさずに修理、オーバーホールに出しましょう。

実用しているアンティーク時計に発生しやすくなります。普段よく使っていましたらこちらの原因より疑ってみるといいかもしれません。

原因2:ムーブメントにさしてある油が乾いてしまった為、動作不良を起こした。

アンティーク時計は、手巻きまたは自動巻きといった機械式時計になります。機械式のムーブメントは、小さな部品同士が接触する箇所には動作を円滑にし、摩耗を防ぐ為に注油されています。

この円滑に動作させる油が乾いてしまう事で、動作をしなくなる事があります。厳密に言いますと、乾くというよりは水分がなくなって硬化するといった方が良いかもしれません。

油切れで動作しなくなった腕時計は、竜頭(腕時計のねじを巻くためのつまみ)を回せなくなっている状態のものが多いです。

これはゼンマイが完全に巻き上がっているからです。この状態から無理に巻き上げますと、ゼンマイが切れてしまうので触らないよいにしましょう。

油切れが原因であれば、原因1の汚れの付着と同様にオーバーホールで回復します。まずは時計修理店に持ち込んでみてください。

長期間使用していない時計に発生しやすいです。使わなくなった時計でも、3ヶ月ごとには動作させてあげるとトラブルを避ける事が可能です。

原因3:時計の寿命

機械式ムーブメントの部品の画像▲地板と呼ばれるムーブメントの部品。パソコンに例えるなら「マザーボード」。地板が破損してしまえば修復は難しい…

機械式時計は「一生物」と言われる程に長く使えるものです。そんなにも長く使える機械式時計ではありますが、物質である以上はいつか壊れてしまう日がきます。

機械式時計の寿命は一般的には実働50年(単純な製造年からの年数ではなく)と言われています。アンティーク時計は1960年代以前に製造されたものですので、アンティーク時計である時点で寿命が来ている時計である可能性はあります

中々時計の寿命がくるまで使う機会はないかと思われるのですが、アンティーク時計は年代を得ているのでどんな使い方をされているか分かりません。

アンティーク時計には「17石」「19石」といった石(宝石)の数が書かれているのをご存知でしょうか。この石は特に摩耗の酷い箇所に補強する意味合いもあります。

つまり石の数が多い程、補強されている箇所も多く頑丈な作りと言えるのです。この石さえ、使い過ぎると割れてきたります。

▲赤い印をつけている受石にはヒビが入っている…補強していない箇所が傷んでいたとしたら

この石は交換が可能なので、補修ができるとしても補強されていない箇所が磨耗していたらやはり寿命と考えるべきなのではないでしょうか。

時計の寿命となるのであれば致し方ないのかもしれませんね。

アンティーク時計で故障しやすい箇所

次にアンティーク時計で故障しやすい箇所について確認していきたいと思います。

機械式ムーブメントは部品の数も多いので、色んな所が不調になりやすいと思いがちですが、実は発生しやすい箇所があります。

  1. 竜頭回り
  2. テンプ
  3. ゼンマイ切れ
  4. ツツカナの緩み

私自身多くのアンティーク時計を見てきましたが、この4つが多くを占めていました。よく動かす部分にもなるので、疲弊しやすいのではないでしょうか。

ではそれぞれ解説していきます。

テンプの天真が折れている

テンプの天真が折れているテンプは腕時計の心臓部にあたる部品です。テンプには髪の毛よりも細い「天真」と呼ばれる細い針があります。

この天真が、ムーブメントとの接地面を最小にし、なるべく摩擦を少なくしています。これによりテンプが回転し、規則正しく動作するのです。

この天真が折れると、腕時計は動作しなくなります。症状は油切れで止まっている状態と良く似ています。ピクリとも動かないはずです。

余りに細い棒ですので、ちょっとした衝撃で折れたりします。ましてやアンティーク腕時計です。衝撃を和らげてくれるショック機能がない腕時計も多い為、落下等の時にダイレクトにダメージを受けます。

長年使い続けると、落としたりするトラブルもやむを得ないと思いますが、なるべく気を付けたいものです。

テンプの破損は部品の交換か、折れている天真を作るかのどちらかです。但し、天真を作るとなるとかなりの職人技です。信頼できる修理店を探す事が、重要になってきます。

竜頭回りの不調

ムーブメントの部品が錆びている竜頭はゼンマイを巻いたり時刻を合わせたりと時計を操作する部品になります。一番負担の掛かる箇所だけに、壊れやすいです。

更に言いますと、錆びやすい箇所にもなります。竜頭回りに防水が施されていない、もしくは防水パッキンがあっても劣化して役に立たなくなっていたりしている為です。

実際アンティーク時計を見かける機会は多いのですが、ほとんどの時計は竜頭の根元の方が錆びています。酷いものになると錆びの腐食が進みすぎて、竜頭の芯が折れてしまいそうなものも…

竜頭は操作で負担が掛かるだけでなく、錆びの腐食も進みやすいとデリケートな場所なのです。

ゼンマイが切れてしまう

ゼンマイが切れている手巻きの腕時計は、竜頭を回すとゼンマイが巻き上がります。最大までいくと巻く事ができなくなるのですが、ゼンマイが切れてしまうと、いくら巻いても巻き止まりがありません。

ゼンマイが切れてしまうと、腕時計の動力がなくなっているので、竜頭を回しても反応しません。動いたとしても数分で止まります。

ゼンマイが切れるのは、症状としては分かりやすいのではないでしょうか。いくら巻いても巻き上げる事ができたら、間違いなくゼンマイが切れてしまっています。

しかし例外もあります。自動巻き腕時計で、手巻き機能付きのタイプのものです。このタイプは、巻き止まりはありませんのでご注意ください。

修理としてはゼンマイの交換になります。ゼンマイであれば修理店もストックが用意されている事が多く、対応してくれる可能性は高いです。

ツツカナの緩み

ツツカナが緩んでいるツツカナと呼ばれる部品が緩んでいると、時刻合わせの時に感覚がないほど軽く回せてしまいます。緩んでいる事で時刻も大幅にずれたりします。

時刻合わせ等で竜頭の操作を繰り返し行い、少しずつ緩んできたと思われます。相当に竜頭の操作を行ったはずです。アンティーク時計ならではの現象ではないでしょうか。

修理としては、ツツカナを締めなおす事で改善されます。ムーブメントの奥深くになる部品なので、修理にある程度の時間がかかると考えていた方が良いです。

竜頭の操作で判断できるので、分かりやすくはあります。ムーブメントをある程度分解してしまうので、オーバーホールも一緒に考えてみてはいかがでしょうか。

動かくなってしまったアンティーク時計を回復させる為には修理またはオーバーホール

動かなくなってしまったアンティーク時計は、修理またはオーバーホールにて回復させる事になります。

時計が動かなくなってしまう原因も様々ですが、少なくとも自然に動かなくなってしまったのであれば、復活する可能性は高いです。

時計店によってはオーバーホールするまでもなく、動きを妨げているゴミを取り除くといった簡易的な修正で復活させてくれるかもしれません。

オーバーホールは主には「正規店」「時計修理店」のどちらかで受け付けています。但し高級ブランドの時計であっても、保証期間は過ぎてしまっています。

補修で必要になるかもしれない部品類も、ストックしていないはずです。つまりは製造元である正規店であっても断られてしまう可能性はあります。

そのためまずはお気軽にお近くの時計店等で相談されてみてはいかがでしょうか。

時計店は店内に料金表がない事も多いです。金額が分からないのも不安なので、まずは見積りしてもらうと「思ったよりも高かった…」といったトラブルも少なくて済みます。

まとめ

今回はアンティーク腕時計が動かなくなる原因と不調になりやすい箇所について解説してみました。自然に動かなくなったのであれば、十分回復可能である事が確認できましたね。

動かなくなった場合に無理に動かさないのも重要なポイントです。

アンティーク時計で故障しやすい箇所は、4点となります。時計の操作や動作に関連する、負荷がかかりやすい箇所が調子悪くなりやすいようです。

  1. 竜頭回り:時計の操作を行う部品類。摩耗しやすくまた錆びが発生しやすい
  2. テンプ:規則正しく時を刻む部品。時計の心臓部。天真と呼ばれる極細の針が折れやすい
  3. ゼンマイ切れ:時計の動力源。消耗したまま使い続けると、切れやすくなる。
  4. ツツカナの緩み:時計の針を回す歯車。緩んでくると時刻が合わなくなる

動かなくなった時は、メンテナンス不足にプラスして故障しやすい箇所を点検してみると原因を掴みやすいです。

オーバーホールや修理は「正規店」「時計修理店」のどちらかに任せる事になります。料金的には、「時計修理店」の方が安い場合が多いです。

またアンティーク時計程の古いモデルになると「正規店」であっても、修理の時に必要となる部品を持ち合わせていない事が多いです。あったとしてもかなりの高額となってしまいそうです。

この点を考えるとアンティーク時計は「時計修理店」の方がメンテナンスしやすいかもしれませんね。

当店でも時計の修理やオーバーホール、行っております。もし時計の事でお困りでしたら遠慮なくお問い合わせください。