「ユリスナルダン(ULYSSE NARDIN)」と聞いてすぐ時計ブランドだと分かられた方は、とても時計通な方ではないでしょうか。
私が初めて手にしたのは、アンティーク品のユリスナルダンでした。当時はユリスナルダンの事も知らず、ブランドのロゴマークだけが特徴的だったのをよく憶えています。
そんなユリスナルダンですが、他の高級ブランドに劣らない程のスイスの名門である事をご存知でしたでしょうか。スイス製らしく上品で高級感漂うデザインは、一目で高級時計と分かる程のオーラがあります。
また品質は高いのに知名度の低さからか、高性能である割に価格が安めだったりもします。今回はユリスナルダンも、アンティーク時計に絞って時計の魅力とメンテナンスについて紹介していきたいと思います。
ユリスナルダンをお持ちの方、ユリスナルダンに興味がある方、是非ご覧になられてみて下さい。
ユリスナルダンとはどんな時計ブランド
ユリスナルダンの創業は1846年、スイスのル・ロックルで創業します。大変古い歴史を持つ時計ブランドです。
因みに、他の高級ブランドの創業はこちらになります。ユリスナルダンの創業は、スイスの老舗ブランドともいえるオメガとほぼ変わりませんね。
ブランド名 | 創業した年 | 創業地 |
ロレックス(ROREX) | 1905年 | イギリス・ロンドン |
オメガ(OMEGA) | 1848年 | スイス・ラショードフォン |
ブライトリング(BREITLING) | 1884年 | スイス・サンティミエ |
タグ・ホイヤー(TAG HEUER) | 1860年 | スイス・サンティミエ |
セイコー(SEIKO) | 1881年 | 日本・東京 |
ユリスナルダンもまた、170年以上続く名門の時計ブランドなのです。但し現在は、フランスのファッション企業大手の「ケリング」の参加に入っています。
ユリスナルダンの名前を引き上げたのは、「マリーンクロノメーター」です。マリーンクロノメーターとは、船舶用の機械式時計です。
ユリスナルダンは、この船舶用の機械式時計で一躍有名となります。船舶の揺れや温度変化、海洋で使用しますので錆びを侵入させない密封性と優れた技術力があったのでしょう。
現在も続くユリスナルダン、脈々と受け継がれた技術を持って製造された腕時計に魅力を感じてしまいませんか。
ユリスナルダンのアンティーク時計の魅力
その昔、船舶時計で圧倒的なシェアを誇った時計ブランドだけに、海をイメージさせてくれるブランドです。イカリのマークのロゴの由来も船舶時計にあるのかもしれません。
アンティーク時計と海は、似ても似つかないのですが、マリンクロノメーターで培った技術は腕時計にも生かされているはずです。
ユリスナルダンは歴史が古いので、様々なタイプのアンティーク時計が存在します。
ユリスナルダンの場合、数は少な目ですが、状態の良い機械式のアンティーク時計を見つけやすいです。機械式タイプの時計が好きな方には、ぴったりのブランドなのです。
因みに「クオーツ式」の時計はないようです。スイスのブランドだけに、機械式に強いこだわりがあるのかもしれません。
年代が古くなればなる程、丁寧な作りの時計が多いです。懐中時計になると、文字盤は琺瑯性、錆びのこないブルースチール、普段目にしないムーブメントにも彫り物と凝った作りが魅力的です。
また機械式の腕時計ばかりでなく、上記でも紹介しましたマリンクロノメーターが販売されている事もあります。コレクションもしくは、置き時計としての用途でしょうか。
ユリスナルダンのアンティーク時計は良質な機械式タイプに加えて、マリンクロノメーターと一風変わった時計のアンティーク時計を見つける事ができます。
しかしユリスナルダンのアンティーク時計は、数も少な目なので購入をお考えであれば気長に探された方が良いかもしれません。
ユリスナルダンのアンティーク時計はどこで購入できる?
アンティーク品のユリスナルダンは、3つのタイプの店舗から購入可能です。
「アンティーク時計専門店」は実店舗となります。実店舗の良さは何といっても、手に取って確認ができる事です。アンティーク時計は総じて、現代の時計に比べると小さめのサイズとなります。
このサイズ感が写真のみでは、イメージしづらいのです。店舗の場合は、購入してみたら思ったよりも小さかった…といったトラブルがありません。
また時計は整備済み(オーバーホール)で販売されていますので、安心して使う事ができます。保証も長くはありませんが付きます。しかし価格は3つタイプの店舗の中で、一番高くなります。
「アンティーク時計のネットショップ」は、アンティーク時計専門の通販サイトとなります。こちらも整備済みのアンティーク時計を、販売している事が多いです。
ネックはやはり手に取って確認ができない事です。因みにアンティーク時計の平均サイズは32ミリ程となります。
最後のネットオークションは、上級者向きになります。保証もありませんし手に取ってみる事もできません。
メンズ、レディースの記載もなく、時計のサイズが書いてない事も珍しくありません。私もネットオークションでメンズと思って落札した時計が、届いて確認してみるとレディースサイズだった事もありました。
しかし価格は一番安くなります。また裏蓋を開けてみたら、「18K」の刻印があったりと思わぬお宝に遭遇する事も…とにかく安く購入したい場合は、ネットオークションとなります。
3つのタイプの店舗の評価をまとめてみました。
安心度 | 保証 | 価格 | |
アンティーク時計専門店(実店舗) | |||
アンティーク時計ネットショップ | |||
ネットオークション |
アンティーク品のユリスナルダンを購入の際は、是非参考にされてみて下さい。
ユリスナルダンのアンティーク時計は実用できる?
ユリスナルダンのアンティーク時計は、勿論実用可能です。現代の時計と変わらず腕に装着し、使用する事が可能です。
しかしいくつか気をつけたい事があります。機械式タイプの時計全般に、当てはまるのかもしれませんが、特にアンティーク時計で気をつけて頂きたい項目となります。
まず一番注意したいのは「湿気には気を付ける」です。これはアンティーク時計に限った事ではありませんが、古い時計は特に注意が必要です。
アンティーク時計は、防水機能がほとんどありません。竜頭とケースの隙間が大きい時計も多く、容易に水気が侵入してしまいます。
湿気が時計内部に入ってくると、錆びてしまい使い物にならなくなる可能性が高いです。
またアンティーク時計は強い衝撃にも弱いです。1960年代のモデルより、ショック機能(INCABLOC)がついたモデルが出始めてきますが古い時計だけに過信は禁物です。
ユリスナルダンは100年程前の懐中時計も存在しますが、ここまで古い時計になるとショック機能も備えていません。
実体験をお話しします。私がコレクションしている時計で、1930年代のオメガの懐中時計を持っていました。
ある日その懐中時計を不注意で落としてしまいました。拾って確認すると全く動かなくなってしまっていたのです。
中を開けて確認してみると、時計の心臓部であるテンプの針(天真)が折れておりました。落とした高さが腰の高さ程でしたので、まさか中の部品が破損してしまうとは思ってもみませんでした。
ユリスナルダンの懐中時計は、文字盤の素材に貴重な琺瑯製(ホーロー)が使われている事もあります。琺瑯製の文字盤は、強い衝撃でヒビが入ったりもしますので、時計内部の破損だけに留まらない事もあるのです。
「使わなくなっても、たまには動作させてあげる」は、ムーブメントに差している油が固着しないようにする為の予防になります。
油が固着してしまうと、動かなくなってしまう可能性がでてきます。動かなくなってしまうと修理やオーバーホールが必要です。
可能であれば1週間に1回、少なくとも1ヶ月に1回程度は動作させてあげたい所です。
このようにアンティーク時計は、少々気を使う部分はありますが実用可能です。新品にはない魅力が詰まったユリスナルダンのアンティーク時計、是非実用してあげて下さい。
アンティーク時計のユリスナルダンに発生しやすいトラブル
では次にユリスナルダンのアンティーク時計に、発生しやすいトラブルを確認していきましょう。これからお話します内容は、アンティーク品ならではの内容となります。
ざっくりと話してしまうと、メンテナンス不足が原因となる事が多いです。最終的な判断は、時計の中を確認してみないと確定できませんが、おおよその目安にはなるはずです。
ネットオークションで手に入れた方、ユリスナルダンを長くメンテナンスされて長くメンテナンスされた方、時計に不安がありましたら是非確認されてみて下さい。
時計内部の部品が破損している
アンティーク時計で多いのは、ムーブメントの部品のどれかが破損している事です。錆びが酷くて、部品が朽ちてしまっている場合もあります。
部品が破損していると、時計は動作できません。できたとしても、正常に動作はしれくれません。修理の為には部品の交換が必要になってきます。
ここでネックとなってくるのは、交換部品の調達です。アンティーク時計程の古いモデルとなると、正規店でも交換部品は保持していません。
では部品が破損した時計は、正規店以外となるとどこで対応してくれるのでしょう。答えは「時計修理専門店」となります。
全ての店舗が対応してくれる訳ではありませんが、時計の部品を自前で作り出す技術をもった時計店も存在するのです。
「時計修理専門店」の場合は、店舗によって対応が違いますので、1店舗で断られたから修理できないと判断せず数店舗に問い合わせてみましょう。
部品の破損はアンティーク時計では、ある程度は仕方のない事です。品質の良いユリスナルダンも例外ではありません。
アンティーク時計の場合は、腕の良い時計修理専門店への出会いが、一つのキーポイントとなってくるのではないでしょうか。
時間が合わなくなった。実際の時間よりも遅れてしまう。もしくは進みすぎてしまう
まず「実際の時間よりも遅れてしまう」のは、時計内部のムーブメントに汚れが溜まっていたり、ムーブメントに差している油が切れてしまっている可能性が高いです。
汚れや油切れにより、ムーブメントの動作に負担がかかっているのです。中にはネジが外れてしまい、テンプに引っかかって動かなくなっている…といった事もあります。
次に「実際の時間よりも進みすぎてしまう」ですが、これは時計の心臓部でもあるテンプが早く動作しすぎているからだと思われます。
普段規則正しく振り続けていたテンプが、なぜ動きが早くなってしまうのでしょうか。テンプには「ヒゲゼンマイ」と呼ばれる細い金属の輪っかのような部品があります。
蚊取り線香をイメージされると分かりやすいかもしれません。このヒゲゼンマイに油が付着してしまうと、蚊取り線香のように渦巻いていた金属線同士が付着してしまうのです。
ヒゲゼンマイの線が附着する事で、テンプの振りが早くなり回転周期が狂ってしまうのです。
油が原因で付着してしまうのですが、多いのは注油した際の油量が多く、過度に差した油がついてしまう事です。メンテナンス不足というよりは、技術的な問題でしょうか。
時間が遅れてきたり、進みすぎたりするのは、症状としては軽い方です。しかしそのまま使い続けるのは、時計に負担となるので、早めに修理やオーバーホールに出すべきでしょう。
時計を裏返したり、向きを変えたら(姿勢差)止まってしまう
時計の向きを変える事で止まってしまうのも、アンティーク時計には発生しやすい症状となります。原因はこちらが考えられます。
「テンプが破損している(天真が折れている)」は、通常は動作できない状態です。テンプの針(天真)は文字盤側とムーブメント側双方にあるのですが、片方のみが折れた状態だと折れていない方の針を軸に、コマが回るように不安定にテンプが動く場合があります。
向きを変えれば当然止まってしまいます。テンプが破損していた場合は、交換もしくはテンプの針(天真)を作り直す等の修理が必要です。
その他には、汚れや油切れでテンプが動かなくなってしまう事もあります。汚れや油の枯渇が、天真回りの抵抗になっているのです。こちらはオーバーホールを行う事で復活します。
時計の向き等の姿勢差で動かなくなるのは、部品の破損かメンテナンス不足かのどちらかになってきます。
長く使い続けるには定期的なオーバーホールが大事
トラブルをなくし、長く使い続けるにはやはり定期的なオーバーホールが大事になってきます。
オーバーホールをせずに使い続けると、メンテナンス不足が原因で調子が悪くなる事もあります。
トラブルを未然に防ぐためにも、定期的なオーバーホールが必要になってくるのです。ではどのくらいのサイクルで、オーバーホールを行っていけば良いのでしょうか。
一般的に、機械式タイプのオーバーホールの推奨サイクルは3~5年と言われています。アンティーク時計のユリスナルダンも、このサイクルでオーバーホールを考えた方がよいでしょう。
むしろアンティーク時計の場合は、推奨サイクルの範囲でも短めの方が良いかもしれません。アンティーク時計は、交換部品の入手が難しい場合もあります。
部品を消耗させずに使い続けていくためには、オーバーホールは必須と考えましょう。アンティーク時計とオーバーホールは切っても切れない関係なのです。
まとめ
今回はユリスナルダンのアンティーク時計について解説してみました。船舶時計や良質なアンティーク時計と、中々魅力的な時計ブランドでしたね。
ユリスナルダンはアンティーク時計だけでなく、現代の時計もスイス製らしく上品で重厚な時計が数多く存在します。
他の高級ブランドに劣らない性能でありながら時計の価格が安めですので、コストパフォーマンスも良いです。
ではおさらいしていきましょう。まずはユリスナルダンのアンティーク時計を購入できる店舗からです。
ネットオークションでの購入は、くれぐれもご注意ください。マリンクロノメーターが出品されている時もあります。
次にアンティーク時計のユリスナルダンで、普段使用する場合に気を付けたい項目です。
アンティーク時計は少々気を使う部分はあるかもしれません。しかし新品の時計にはない魅力が詰まっています。
更に機械式腕時計は一生物と呼ばれる程長く使えます。定期的なオーバーホールを行い、末永く使ってあげて下さい。